イスラムの誕生以後、ペルシアからスペインにまで及ぶ征服の歴史を追います。征服された民はどうなったのでしょうか？　多神教の者は改宗し、唯一の神アラーを崇めるしかありません。ユダヤ教徒やキリスト教徒は「啓典の民」として、それぞれの信仰を保障されましたが、制限された形のものになりました。

721年にイスラム帝国はとてつもなく巨大なものとなります。帝国の中でユダヤ教徒やキリスト教徒は少数派となりつつも、帝国での地位を確保しようとします。このような状況下で、バグダードの「知恵の館」に代表されるような文化交流も行われています。しかし、11世紀にはグラナダでユダヤ人の虐殺が起き、12世紀のムワッヒド朝では、ユダヤ教徒やキリスト教徒を迫害し、改宗を迫ることも起きています。15世紀になると、レコンキスタがユダヤ教徒やムスリムをスペインから追い払い、ナスル朝の崩壊を招きます。

ヨーロッパを舞台に様々なことが起こります。フランス革命が勃発し、国民国家が生まれます。ユダヤ教徒たちもヨーロッパの市民となりますが、激化した反ユダヤ主義の標的となりました。しかし、新しい国家のエリートたちを取り込むと、イスラム世界でのユダヤ教徒の状況に大きな関心を向け、ユダヤ教徒を保護しようとします。シオニズムとアラブ世界のナショナリズムの狭間で、パレスチナ（トルコ人は「南シリア」と呼ぶ）が宗教や政治の争いの舞台になっていきます。

1945年、世界はナチズムの強制収容所のおぞましさを目の当たりにします。1948年にはイスラエルが誕生し、アラブ人やムスリムたちは怒りを感じ嘆く一方で、ユダヤ人は世界の至るところで歓喜の声をあげました。数十万のパレスチナ人たちが、それまで住んでいた土地から追い払われることになります。その後、わずか数十年の間に、イスラム世界に住んでいたユダヤ人たちの大多数がイスラエルに向かいます。イラク、エジプト、イラン、シリア、モロッコ、チュニジアを立ち去るのでした。